顔料とは

色材の種類(染料と顔料)

私たちの身の回りには、美しい色を帯びているものがたくさんあります。自然にある植物や動物のほか、色鮮やかな布や紙、器、建物といった人工物が、生活を美しく彩っています。これらの人工物の着色に用いられているのが「色材」です。

色材とは、文字通り「色の原料」のことで、大きく「染料」と「顔料」の2つに分けられます。いずれも色を帯びた粉末ですが、染料は水や油に溶け、布や紙などの繊維の間にしみこんで染める性質をもっています。一方で、顔料は水や油に溶けず、バインダー(定着剤)を加えて面に塗ることで色が着くといった大きな性質の違いがあります。

色材の種類(染料と顔料)

顔料の種類と性質

顔料の種類と性質

顔料は、大きく「無機顔料」と「有機顔料」の2つに分けられます。無機顔料は、天然の鉱石や金属の化学反応によって得られる酸化物などから作られる顔料で、有機顔料は石油などから合成した顔料です。無機顔料は、さらに「天然鉱物顔料」と「合成無機顔料」の2つに分かれます。

天然鉱物顔料は、文字通り天然にある鉱物や土から得られる顔料です。代表的なものに、黄土や孔雀石、群青などがあり、これらは現在でも日本画の岩絵具として使われています。

一方で、合成無機顔料は、鉄や銅、鉛などの金属を化学反応させることで得られる酸化物や結合物から作られます。代表的なものに、コバルト青や黄鉛、チタン白などがあり、これらはおもに18世紀から20世紀初頭にかけて発見され、製造・使用されるようになりました。またこのほかにも、暗闇の中でネオンサインのように明るく光る蛍光顔料など、さまざまな「特殊顔料」も開発されています。

顔料のおもな種類と性質

分類 無機顔料 有機顔料 特殊顔料
天然鉱物顔料 合成無機顔料
種類 赤土
黄土
緑土
孔雀石
胡粉
黒鉛
紺青
亜鉛華
コバルト青
エメラルド緑
ビリジャン
チタン白
アルカリブルー
リゾールレッド
カーミン6B
ジスアゾエロー
フタロシアニンブルー
キナクリドンレッド
イソインドリンエロー
蛍光顔料
金属粉顔料
パール顔料
示温顔料
窯業用顔料
性質 落ち着いた色調
色数が少ない
比較的安価
比重が大きい(重い)
耐候性に優れる
鮮やかな色調
色数も多い
高価なものもある
比重が小さい(軽い)
着色力に優れる
※種類により異なる

顔料の歴史

私たち人類は、紀元前からさまざまな形で顔料を使ってきました。スペインとの国境に近いフランスのラスコー地方やアルタミラ地方の洞窟からは、顔料で描かれた馬や羊、野牛などの壁画が発見されました。これらの壁画は、少なくとも1万5000年以上も昔に描かれたものであることが最新の調査によって明らかになっています。

動物たちの壁画は、ほとんどが褐色や黒色で描かれています。これは身近で手に入れやすかった赤土や黒土などの天然鉱物顔料を使ったためで、これらの土類を、獣の脂などと混ぜて洞窟の壁に塗ったものと見られています。その後も人類は、次々と新しい天然鉱物顔料(有色の岩石や土)を発見し、色材として利用してきました。

先史時代の洞窟壁画
先史時代の洞窟壁画

天然鉱物顔料は、何億年という時間経過の中で、地球上に自然に形成されたものです。そのため野ざらしの環境でも変色しにくく、耐光性、耐熱性に優れています。しかし一方で、粒子は硬く、粗くて、着色力も限られていることから、何度も重ねて塗らないと十分な発色が得られないという欠点もあります。

また、最も不便なのが、天然物であるがゆえに、採れる量に限りがあることです。なかでもラピスラズリと呼ばれる宝石からつくられる「ウルトラマリン(青)」など、一部の顔料は金に匹敵するほど大変貴重なものであり、中世の画家たちは宮廷に仕えて顔料を支給してもらわなければ、絵を描くことが叶わなかったとされます。

このような背景から、顔料を人工的に製造することは、人類の長年の夢のひとつでした。紀元前にも、エジプト人たちが鉛を酢に浸して「鉛白」という合成顔料をつくっていたと考えられていますが、工業的に、安定して製造できるようになったのは、18世紀になってからでした。最初の青の合成顔料として登場したのが、鉄を化学反応させることで得られる「紺青」で、1704年にドイツのベルリンで開発に成功しました。これ以降、安価で大量に供給が可能な合成顔料が次々に開発され、一般に幅広く普及していきました。

また、19世紀になると、染料と金属分を合成させた有機顔料が登場します。有機顔料は、無機顔料に比べ、発色が鮮やかで、着色力も強く、色数が豊富にあるなど多くの利点がありました。加えて、近年になって一部の無機顔料に毒性があることが判明したことから、人体に無害な有機顔料の重要性は、ますますそのウェイトを増しています。

明治40年ごろのインキ工場の様子
明治40年ごろのインキ工場の様子

顔料の表記法

顔料を個別に識別するための方法として、国際的に用いられているのが「カラーインデックス名(Colour Index Generic Name)」です。カラーインデックス名は、「C.I(Colour Index International)」(英国染料染色学会と米国繊維化学技術・染色技術協会によって共同で存立されているデータベース)に登録されている顔料の表記法です。

C.Iには、6000 種類以上の色素や着色材(顔料と染料)、および関連化合物について、効用や色合いに基づくカラーインデックス名が登録されています。また、それぞれ「化学構造に基づく識別番号(Colour Index Constitution Number)」 が与えられ、それらの商品名・化学的性質・製造法なども掲載されています。

一方、「CASナンバー」によっても顔料を識別することが可能です。CASは「Chemical Abstracts Service」の略であり、アメリカ化学会が発行する『Chemical Abstracts 誌』で使用される化合物番号になります。CASナンバーは、最大10桁の番号で表され、これにより顔料を含む化学物質を識別することができます。

顔料の表記法の例

化学構造名 銅フタロシアニン(フタロシアニン青)
カラーインデックス Pigment Blue 15
C.I.Constitution No. 74160
CASナンバー 147-14-8

顔料の用途

顔料は、各種印刷インキや塗料、プラスチックの着色だけでなく、化粧品や織物、食品にいたるまで、さまざまな用途に用いられています。その使用用途は、顔料のもつ性質によって大きく変わります。たとえば耐候性(※光や風雨、温度変化に対する耐性)に優れ、比較的安価な無機顔料は、建築材やコンテナなど、塗装面積が大きく長期間屋外に置かれる製品の塗料に多く使用されています。一方、着色力に優れ、発色が鮮やかな有機顔料は、約6割が印刷インキ、約2割がプラスチック製品の着色剤などに用いられます。

また、一部の顔料は着色だけでなく、特殊な用途で使用されることもあります。たとえば「体質顔料」(※増量剤として用いられる白色および無色の顔料)は、光沢があり、高い付着性があることから、化粧品のフェイスパウダーなどに使用されています。また、黒色顔料であるカーボンブラックは、ゴムに練りこむと強度が著しく向上するため、自動車などのタイヤ製品に使用されたり、導電性能を生かして、電子部品や磁気テープ材料などにも使用されています。

顔料の用途

お問い合わせ

トーヨーカラー株式会社
顔料営業部
TEL : 03-3272-0818