製品・ソリューション

プラスチック用着色剤とは

プラスチック用着色剤は、プラスチックの中に色材を練りこんで着色すること(内部着色)に用いる色材の総称です。着色剤とは何か、着色剤の役割と機能、種類に加え、マスターバッチの製造方法やプラスチックの成形方法について説明しています。

はじめに

私たちの身のまわりには、ペットボトルや文房具、食品の容器(トレー)など、さまざまなプラスチック製品があります。これらのプラスチック製品には、もともと色がついているわけではありません。プラスチック(樹脂)は、本来無色(乳白色)に近い色です。そこに顔料などの色材を加えることで、さまざまな色彩のプラスチック製品がつくられています。

プラスチックに着色する方法は、大きく「外部着色」と「内部着色」の2つがあります。外部着色とは、プラスチックの表面に着色することで、印刷や塗装、メッキなどがそれに当たります。一方で、内部着色は、プラスチックの中に色材を練りこんで着色することです。プラスチックと色材を混ぜ合わせるため、外部着色とは異なり、中まで均一に色づけされます。この内部着色に用いる色材を総称して、「着色剤」と呼びます。

プラスチック(樹脂)
着色剤
着色剤の分類

着色剤の役割と機能

着色剤は、生活に彩りを与えるだけでなく、商品のイメージ形成や利便性、品質の向上にも役立っています。着色の効果を最も実感しやすいのは「装飾」です。たとえば化粧品や家電、自動車の内装などは、材質に合わせて発色や光沢を工夫することで、高級感や重厚感などの印象を上手く演出しています。

着色には「識別」の役割もあります。身近な例でいえば、温かい飲み物のペットボトルのふたは「オレンジ」で統一されているため、すぐに中身がホット飲料であることを認識できます。また、工事のときや緊急時にわかりやすいように、水道用のパイプは「青色」、ガス用のパイプは「黄色」と、世界標準で色分けがされています。そのほかにも、製品の外身を黒で着色することで、紫外線を遮断して中身の劣化を防ぐなど、「内容物の保護」のためにも色が効果的に使われています。
一方で、着色剤には色を付与するだけでなく、もっと直接的に製品の機能性を向上させる役割もあります。これを「機能性着色剤」と呼びます。
たとえば、自動車のバンパーやコンテナなどは、カーボンブラックを着色剤として用いることで耐候性(※気温の変化や風雨に対する耐性)を向上させています。

また、着色剤には、「導電性」や「帯電防止」の機能を付与することも可能です。たとえば、パソコンや検査機器など、ICチップのような精密機器が組み込まれている製品は、微弱な電流であっても誤作動や故障の原因となります。ところが、それらを保護するプラスチック素材は、下敷きを擦るとホコリを吸着することからもわかるように、もともとは電気を帯びやすい性質をもっています。このような場合は、導電性の高い着色剤をプラスチックに練り込むことで、電気を外部に逃がすことが可能になり、故障のリスクを下げられます。ほかにも、太陽電池のバックシートに白色の着色剤を用いることで、内部で光を反射させて発電効率を上げるなどの活用例もあります。

着色剤の種類

着色剤の種類には、おもに「マスターバッチ」「着色ペレット・着色コンパウンド」「ドライカラー」「ペーストカラー・リキッドマスターバッチ」などがあります。これらとナチュラルペレット(※色材を混ぜる前の粒子状の形をしたプラスチック)を混ぜ合わせ、成形することで、プラスチック製品がつくられます。

マスターバッチ

ペレット(粒子)状の着色剤。中に高濃度の顔料が練り込まれており、ナチュラルペレットと混ぜる量を調整することで、容易に色の濃淡を変えられます。分散性に優れ、均一で美しい発色を実現できるほか、飛散や機材汚染の心配がなく、取り扱いも容易です。また、着色ペレットに比べ、コストパフォーマンスに優れています。

着色ペレット・着色コンパウンド

ペレット状の着色剤。マスターバッチと異なり、すでに最終製品と同じ濃度(色味)に設定されているため、新たにナチュラルペレットと混ぜ合わせる必要がありません。配合の手間がなく、安定して目的の色を出しやすいメリットがありますが、製品をつくるのに大量の在庫が必要になるため、ほかと比べ高コストになります。

ドライカラー

粉末状の着色剤。顔料と金属石鹸などを混ぜ合わせてつくられます。製造にほとんど手間がかからないため、最も安価な着色剤ですが、飛散しやすい、機材を汚しやすい、計量が難しいなど、取り扱いの面でいくつかの欠点があります。

ペーストカラー・リキッドマスターバッチ

粉末状の着色剤。顔料と金属石鹸などを混ぜ合わせてつくられます。製造にほとんど手間がかからないため、最も安価な着色剤ですが、飛散しやすい、機材を汚しやすい、計量が難しいなど、取り扱いの面でいくつかの欠点があります。

着色剤の種類ごとの特徴と優位点
マスターバッチ 着色ペレット 着色コンパウンド ドライカラー ペーストカラー
リキッドマスターバッチ
形状 ペレット ペレット ペレット 粉末 液状
顔料濃度 10~70% 5%以下 5%以下 30~80% 30~60%
分散性(粗粒子) ○~◎ ○~◎
分散性(色むら)
高顔料濃度着色 × ×
飛散性 ×
汚染性 × ×
計量性 不要 不要
成形加工性 △~○
貯蔵安定性
在庫費用 × ×
汎用性 × × △~○
着色コスト ×

マスターバッチの製造工程

現在、国内で使用される着色剤は、トータルバランスに優れ、比較的軽設備で製造が可能なマスターバッチが主流となっています。マスターバッチは、ベースとなるペレット(樹脂素材)に、顔料などの色材や機能性材料を練り込むことで、さまざまな発色や機能を持たせることができます。

①仕込み・撹拌

原料となるベース樹脂・顔料などの色材・機能材などを、設計した処方どおりに計量し、撹拌機に投入して、均一になるよう混ぜ合わせます。

②押出

混ぜ合わせたものを押出機に投入し、溶融・混練します。
押出機の先端から、スパゲッティのような細長い棒状となって、着色された樹脂が出てきます。

③冷却

押し出された棒状の着色樹脂を水槽に入れて冷却し、固める。

④切断

ペレタイザーを利用して、3~5mm程度のペレット状にカットしてマスターバッチができあがります。

⑤充填・梱包

できあがったマスターバッチを袋詰めして、ロボットアームでパレットに積み上げ、出荷準備完了です。

プラスチックの種類

着色剤と混ぜ合わせるプラスチックにも、いろいろな種類があります。日用品に使用されることが多い熱可塑性(※熱で溶かして成形する)プラスチックは、「結晶性」と「非結晶性」の2つに分類でき、それぞれさまざまな物性をもっています。製品を設計する上では、これらプラスチック素材の物性を考慮しなければなりません。
たとえば、結晶性プラスチックのうち、熱や薬品に強いポリエチレン(PE)はフィルムやバケツなどに、透明度が高く丈夫なポリエチレンテレフタレート(PET)はペットボトルや卵のパックなどに使われます。

プラスチックの一例
分類 素材の種類 略号 主な性質 製品例
結晶性プラスチック ポリエチレン PE 熱や薬品に強い フィルム、バケツなど
ポリエチレンテレフタレート PET 透明度が高く丈夫 ペットボトル、卵パックなど
非結晶性プラスチック ポリ塩化ビニル PVC 燃えにくく丈夫 ホース、電線など
ABS樹脂 ABS 不透明、割れや熱に強い 家具、パソコンなど

プラスチックの成形方法

プラスチックの成形方法には、圧縮成形や射出成形、カレンダー成形、押出成形、ブロー成形、真空成形など、さまざまな方法があります。

射出成形

溶かした樹脂を、注射器で注射するように金型に流し込んで成形します。容器やキャップをつくるのに用いられています。

押出成形

機械内部のスクリューを回転させ、溶かした樹脂を前方に押し出して成形します。チューブやパイプなどをつくるのに用いられています。

ブロー成形

溶かした樹脂の内側に圧縮空気を吹き込み、金型の形に沿わせて成形します。ボトルやスポイトなどをつくるのに用いられています。

カレンダー成形

加熱したロールで樹脂を練りながら引き伸ばして成形します。フィルムやシートなどをつくるのに用いられています。

圧縮成形

金型に入れた樹脂を、熱で溶かしながら圧力をかけて成形します。おもに容器類をつくるのに用いられています。

真空成形

板状の樹脂を加熱して柔らかくした後、真空吸引して金型の形に沿わせて成形します。容器類をつくるのに用いられています。

当社製品の特長

トーヨーカラーのプラスチック用着色剤は、プラスチックの種類、成形加工法に応じて、粉末、ペースト、ペレット状などさまざまなラインナップを取り揃えています。また、お客様が使用されるプラスチックの種類やご希望の着色剤形状に合わせた対応もしています。
さらに、単なる着色用途を超えて難燃性や導電性、光学特性などを付与した高機能性コンパウンド・マスターバッチも製造しています。

お問い合わせ

トーヨーカラー株式会社 着色営業部

トーヨーカラー株式会社